落語のすばらしさについて教えるよ。
私は学生時代に落語研究会(通称おちけん落研)に所属していました。落研に入った動機はもう落語が大好きだからです。その経験を基に落語を紹介して、一人でも落語が好きになってくれる人が増えればいいなと思っています。
この記事をおすすめする人
- 落語という言葉は知っているがいまいちわからない
- 笑点をいつもみてて落語に興味がある
- ビジネスで話がうまくなりたい
- おすすめの噺家を知りたい
落語とはなんなのか
たった一人の芸人(落語家、一般的には噺家(はなしか、といいます)のこと)で舞台(高座、こうざ)に上がり、座布団に座りながら何役も演じてネタをこなすお笑いのひとつです。歴史も長く、伝統芸能のひとつとしても数えられ、名人と呼ばれる噺家は人間国宝になる人もいます。
落語の種類
古典落語と新作(創作)落語のがあって、大正以降に作られた作品を新作落語と言います。なので、もう100年近い歴史のある新作落語もあるわけです。
落語を楽しむためにルール確認
登場人物
落語って、登場人物が決まっているんです。すべてではないですが、基本的な登場人物の性格の名前が決まっているので、親しみがもてちゃうんですね。それではいくつか紹介します。
与太郎
ぼんやりした人物として描かれます。そして、性格は呑気で楽天的なんですが、やることなすこと、何をやっても失敗ばかりするため、心配した周囲の人間から助言をされることが多いです。与太郎は愚か者の代名詞であり、多分昭和の番組みても、「この与太郎が!」って突っ込みがコントの中でよく出てきますよ。
芸能人でいうと、志村けんや林家木久扇を思い浮かべていただければわかりやすいと思います。
八五郎(通称、八っつぁん)
相当うるさい性格で、しかもおっちょこちょいというキャラクターです。人の話を半分しか聞かず、その結果騒動を巻き起こすパターンも多々あります。吉原通いを趣味の一つとしており、その悪影響で坊主になってしまうという一席もあるくらいです。
失敗してヘラヘラしているのが八っつぁんです。
熊五郎(通称、熊さん)
八五郎がおっちょこちょいとして描かれるのに対し、乱暴者として描かれる場合が多いです。お酒が何より大好きで、酒にまつわる失敗談も多々あります。
金坊、亀ちゃん、定吉
落語に出てくる子どものキャラクターです。まとめてしまいますね。落語に出てくる子供キャラクターは憎まれ口を叩いたり、揚げ足をとったりして大人を困らせる存在です。憎らしさがかわいいといいましょうか。
金坊や亀ちゃんは町人の子どもとして、定吉は奉公中の丁稚としてよく出てきます。「桃太郎」で父親に昔話の論理的な解説をしたように、大人の言動や行動を冷静な目で見て、鋭く矛盾を突っ込むことも多々あります。
ご隠居さん
いろいろなことを知っている「物知り」という役回りです。八っつぁんや熊さんの長屋の連中は、何か分からないことがあると、ご隠居に聞きにいきます。
このご隠居さんにも二種類いて、人生経験豊かで、博識なご隠居さんと、見栄っ張りで適当なことばかりいうご隠居さんがいます。
でも、八っつぁんや熊さんからの尊敬のまなざしは、どちらのご隠居さんに対しても同じなんです。
このあたりの齟齬が面白いんですよ。
大家さん
落語の大家さんは男気があって、人情深い!それにつきますかね。
あとは、狂歌や俳句など詩が趣味という道楽な部分もあります。
落語は現代までに200席も残っているわけですからいろいろな人や生き様があります。ですが、以上の登場人物を知っているだけで、落語の距離がぐっと近づくはずです。
これは知る必要もないとはおもしますが、、、
一応落語は、馬鹿なことを繰り返す与太郎の話を与太話(よたばなし、厳密に違いますが導入なので与太郎が出てきたら与太話とします)、思わず泣いてしまうような人情噺、歌舞伎や浄瑠璃の芝居が入ったような芝居噺、遊郭が舞台の話で廓話(くるわはなし)、江戸時代から続く元祖下ネタ艶笑話(えいんしょうはなし)があります。
一応、戦争で禁止された落語っていうのもあって、禁演落語(きんえんらくご)っていいます。廓話や間男の話ですね。その他、人種差別などの話は実質現在でも禁止状態ですが、個人でやる落語会ではそういうのも聞けますよね。アウトロー落語として有名なのが、快楽亭ブラックですね。
超有名落語家の立川談春も「芝濱・改」という作品で師匠談志に叱られてしばらく上演していませんでした。
どうやって何役も演じているのか
落語は複数人の役や性別や年齢を超えて演じる必要があります。声色以外にもいろいろとルールがあります。
上下(かみしも)のルール
ご存知のように右を向いたり左を向いたりしてセリフをしゃべりますが、この事を「上下をつける」「上下を切る」「上下をふる」などと言います。
客席から向かって右方を上手(かみて)左方を下手(しもて)といいますが、これは芝居の舞台に準じた設定、つまり花道があるほうが下手、座敷のあるほうが上手ということになります。従って話中の人物の位置も、顔を下手に向ければ上位の人、上手へ向ければ下位の人物を表します。上下の関係は、階級差、年齢順、性別、裕福度で決めますが、これに上体の動き、手の動き、向きの動きを大振りにするか控えめにするかで、人物の描写が出てきます。
ここまでのことがわかれば、落語を聞く準備ができたと思います。それでは核心に近づいていきましょう。
落語って何が面白いの?
これはお笑いはなぜ面白いのかっていうのに近いのではないでしょうか。
上方落語四天王の一人、故・桂枝雀は「緊張と緩和」という言葉で言い表しています。
ずっと緩和(例えば、与太郎が馬鹿した)だけでは、笑いは起きないわけです。
それに緊張(与太郎を叱る人)があるから、この落差でもって笑いが起きるわけです。
このことについて考えに考えて鬱で自殺してしまったのが、桂枝雀です。
私が最も好きな噺家です。
立川談志は、「業の肯定」「イリュージョン」と「江戸の風が吹いているか」この二点についてずっと考えていたそうです。
この動画を見て分かってもらえると思いましたが、落語の本編にいきなり入るわけではありません。
最初に小話(こばなし)をして本編に入るわけです。これを、枕っていいます。
この枕が抜群に面白いのが、立川談春と柳家喬太郎です。この二人は現代版落語四天王と言われる人たちです。
私の談春の兄弟弟子の立川志の輔の「バールのようなもの」っていう落語が枕から好きです。
というか、これを見て楽しめる人は落語をどんどん聞くべきです。この枕で「隠居の話しますよ~」って流れ、スムーズですよね。この話の中でお客さんは笑う準備するわけです。
本編で解釈が難しいところを解説したり、本編と関連のある話で場を温めたりする役割があります。
じゃあ、いつ本編に入ったか、どうやったらわかるんですか?
これは、着物の羽織を脱いだら本編というのが一般的な合図です。
または、先ほど言った、かみしもをハッキリやるのですぐわかります。
噺家が個性的!
わかりやすいように、昔、春風亭小朝が演じた形態模写の写真をもとに紹介していきます。
金髪豚野郎と言われた、若き日の小朝です。
このとき、太鼓やっているのは落語四天王の立川談志です。
この出囃子(でばやし)っていうのは、噺家が登場する際にかかる三味線と太鼓で奏でる曲です。
落研入ったら出囃子ができるように、太鼓と三味線から覚えます。落語よりも出囃子です。
それだけ、重要なんですよ。
あとは、新入生は話が終わるたびに座布団返しをしにいきます。
この座布団返しも不思議な習慣だなって思ってました。
例えば、M1でもあの出囃子があるから、盛り上がりますよね。
この曲です。
この猫背でノシノシと現れる姿は、小さんです。元落語協会の会長ですね。落語協会分裂騒動を引き起こした張本人です。
小さんの落語といえばやっぱり「時そば」でしょう。そばの食べ方に落語人生をかけたというほど、そばを本当に食っているように見える、そばがうまそう、そばを食いたくなると客が思うほどです。
そして、このお辞儀。手をグーにして、この高さまでしか下げないで、お辞儀をする。
小朝はよく見てますね。小さんをみているようです。
こちらが本物の小さん。
こんなに手を広げませんが、こんな歩きかたをして出てくる、十代目金原亭馬生(きんげんていばしょう)の物まねです。
馬生といえば「目黒のさんま」ですね。
下の写真は誰を真似しているでしょうか。たぶん、すぐわかると思います笑
答えは立川談志です。
他にも、古今亭園菊、古今亭志ん朝も特徴的ですし、柳亭市馬に関しては、歌が得意なので、落語中ずっと歌ってますよ!笑
上方落語では、桂枝雀の弟子桂南光は古典をやる実力者、いらっしゃーいでおなじみの桂分枝(三枝の方がみんなしっているかな)は創作落語、鶴光でおま!でANNで大人気だった笑福亭鶴光(関西では伸ばさないので、つるこ)などたくさんいます。
最近ではお笑い芸人から落語になった、月亭方正や桂さんどなど落語会は盛り上がってますよ。
落語導入におすすめの漫画
アニメもあります。最近ドラマになったようですよね。日本にいたら見ていたのに。。。
この辺は最近人気だと思います。
名作中の名作がこちらです
寄席芸人伝はうんちく漫画の巨匠「古谷三敏」の作品です。
どんな噺家から試せばいいの?
買ってくれればアフィリエイトなので私にお金が入るのでうれしいですが、実際、都道府県市町村の図書館で無料でCD、DVDが借りれます。また、大学など学校の図書館にもおいてる可能性が非常に高いです。
そして、以下の名前をYoutubeで検索してもたくさん出てくると思います。
落語をこれまであんまり聞いたことない人の導入にはこちらがおすすめを紹介します。
立川志の輔
立川談春
春風亭一之輔
柳家喬太郎
春風亭昇太
昇太の場合は、確実にDVDを見ることをおすすめします。動きが大きくて、面白いです。
落語って面白いじゃん!ってなったら、落語四天王の3人の話を聞いてみましょう
5代目三遊亭圓楽(先代)
立川談志
桂枝雀
私は落語通になりたい!って方には、こちらがおすすめ。
春風亭小朝
柳家さん喬
柳亭市馬
五街道雲助
柳家小三治
笑福亭松喬
このあたりでしょうか。参考になれば幸いです。
どんな話から聞くのがいい?
与太話がわかりやすいですが、年末ですし、掛取萬歳(かけとりまんざい)や初天神なんかもいいですね。15分くらいのネタをみることをおすすめします。以前紹介した、雪の瀬川なんてはじめにきくと重いかもしれません。
あと、オチがわかりやすいのがいいですね。俳句のように、「待つ」と「松」をかけたようなおしゃれなオチだとその落語を知らないと楽しめない、不完全燃焼になるかもしれません。例えば、ちしゃ医者(藪医者のこと)なんかだと、最後、車で運んでいるとき医者が怒って蹴っ飛ばします。運んでる人は「何するんだ」というと、医者が「足だから、お前さんはまだ生きている」っていうオチなんです。
「私の手にかかれば」って慣用句にあるように、手を使っていたら(殴っていたら)私は藪医者だから、あなたを手にかけていたかもしれないよ(あなたは死んでいたかもしれないよ)。っていう感じです。
落語は初めてきいても楽しめますが、何度もいろんな噺家の同じ一席をきくと、この噺家はオチをこうするのか、おー、ここアレンジしている!そうなると、さっき大家が言ってたことって、こういう意味になるんじゃないのか?って言ったように、噺家の解釈によって話の時代背景からニュアンスすべてが変わっています。
だからこそ、何百年の昔の話が色あせないのだと思います。
落語をたくさん聞いて、楽しむもよし、ビジネススキルをあげてみるもよし、試してみてください。