NMRは難しくて使えない:パルスシーケンス

NMRを勉強していると必ず出てくるパルスシーケンス(パルスチャート やパルス系列など)と呼ばれる工程を目にします。

グラジエントパルス

それぞれのパーツ(傾斜磁場)の位置が微妙に異なっていますが、どんな意味があるのか、いまいちわかりませんよね。

  • 『RFパルスを印加する時の傾斜磁場は一つ』
  • 『Echoを収集する時の傾斜磁場は一つ』
  • 『Echoの収集時は位相が収束している部分でとる』

90°パルスや180°パルスとよばれるRFパルス(radio frequency pulse)を印加する時、位相が崩れないように一定の強さの傾斜磁場で行う必要があります。

通常はスライ スの位置や厚さを決定するためのスライス決定用 傾斜磁場(Gz)とRFパルスを同時に行います。

そのため他の位相エンコード傾斜磁場 (Gy)や周波数エンコード傾斜磁場(Gx)が同時 間に被ってしまうとそれらの影響により傾斜磁場 が一定にならず位相が崩れてしまいます。

これは180°パルスも同様であり、RFパルス印加 時にGz以外の傾斜磁場がくることはありません。

二番目としては『Echoを収集する時の傾斜磁場は一つ』です。
echoを収集する時は読み取りに必要な傾斜磁場である周波数エンコード傾斜磁場(Gx)を同時に行います。こちらも一定の強さの傾斜磁場が必要で、 位相が崩れないようにします。

今まで、傾斜磁場が位相を崩すことを中心に 考えましたが、ここでdephasingとrephasingにつ いて考えます。

位相が揃った状態から不揃いの状 態になることをdephasing(dephase)といい、 逆に位相の揃っていない状態から揃った状態にな ることをrephasing(rephase)といいます。
つまり、これまでどちらかといえばdephasingの話だっ たことがわかると思います。揃っている位相に傾 斜磁場を行うとdephasingがおきます。その後、逆の方向に傾斜磁場をかけるとrephasingされて 再び位相が揃うこと(再収束)になります。

echoを収集する時はGx を同時に行いますが、発生するechoが一番強い 時にちょうどrephasingされて位相が再収束した 部分とタイミングを合わせる必要があります。

静磁場に入っ てきたプロトンの周波数(簡単にいえば単位時間 あたりの波の回数)と位相(1周期内の波の位置) はどうなっているでしょうか?結果から述べてし まいますが周波数は揃っていて、位相は揃ってい ない状態(分散)にあります。そこに傾斜磁場を かけてみます。

周波数においては傾斜磁場の強い部分(プラスの部分)では波の回数が多くなる、 つまり周波数は高くなります。ちょうど中心部分 では傾斜磁場の強さが変わらないために周波数も 変化はなく、逆に傾斜磁場は強いがマイナスの部 分では周波数は低くなります。位相においてはも ともと揃っていない状態なので、傾斜磁場を行っ てもかわらず揃っていない状態にあります。ただ 今回は理解しやすくするために傾斜磁場によって 余計に分散する、より速く分散すると考えて進め ていきます。

次に傾斜磁場を切った状態を考えてみます。周波数と位相はどうなるでしょうか?周波数は傾斜 磁場を行う前の状態に戻り、位相はもともと揃っ ていないので揃うことはありません。つまり周波 数は傾斜磁場を切って時間が経過すると揃います が、位相は時間が経過するだけでは揃わない(逆 向きに傾斜磁場をかけると4にでてきたrephasing により再収束しますが、今は逆向きを考えずに純 粋に傾斜磁場だけを考慮しています)ということ になります。

位相を太線として、揃っている状態では 直線上の傾斜磁場がかかっていない高さに、また 位相の揃っていない状態では傾斜磁場の強い部分 付近になるように示しています。

本来位相は全体を通して考えなくてはいけませ んが、各傾斜磁場に分割し説明してから最終的に 一つにまとめたいと思います。ここまで述べてき て気付いたかもしれませんが先ほどから『位相』 という言葉が多用されています。SE法のみでな くGE法(Gradient Echo法)のパルスシーケンス を考える時にわかっているととても便利なので 『位相』をクリアにすることを中心に進めます。

90°パルスと同時にス ライス選択のためのGzを印加しますが、先ほどで述べたように位相の揃っていない所に傾斜磁場をかけ るとさらに位相は崩れます。しかし90°パルスは もともと位相を揃えて巨視的磁化ベクトルを90° 傾けるパルスであるために、揃っていない位相も 揃うことになります。その後再び傾斜磁場によっ て崩れますが、逆向きに傾斜磁場を印加することでrephasingにより再収束することに なります。

ここで一つの矛盾が生じます。傾斜磁場は位相 をdephasingさせますが、90°パルスは位相を揃 えるという逆の作用があり、なおかつそれらが同 時におこなわれることです。傾斜磁場の観点から、90°パルスの観点からみると、どちらの効力が大きいかというと後者の力が強いといわれていますが、90°パルスの中 心においてはどちらも位相が揃うことになり違いはありません。

90°パ ルスは位相の再収束の作用をしますが、180°パルスは位相 を逆向きにする働きをします(180°パルスの直前 に揃った位相がくるので途中で逆向きになります が再び位相は揃います)。

磁場勾配NMR

最近、拡散係数を求めるために、磁場勾配NMRを測定しています。
今回の共同研究先のサンプルは沈殿があり、いいNMRデータが取れそうにありません。

今後、磁場勾配NMRについてや、関連して表面科学におけるNMRの役割なんかも書いていこうと思います。

NMRは難しいですね。

クリスマスホリデーをつかって、以前の記事も書き直します。

Posted by xxxchem